兵庫県立健康環境科学研究センター
健 環 研 リ ポ ー ト
平成21年1月 第17号
兵庫県マスコット はばタン
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食 品 の 安 全 性 の 確 保
― 研 究 セ ン タ ー に お け る 取 り 組 み ―
昨 年 は 、 輸 入 冷 凍 ギ ョ ー ザ の 農 薬 混 入 や カ ビ 毒 素 な ど で 汚 染 し た 輸 入 米 の 不 正 流 通 、 さ ら に 輸 入 食
品 の メ ラ ミ ン 混 入 な ど の 事 件 が 相 次 ぎ 、 危 険 な 食 品 の 流 通 が 大 き な 問 題 と な り ま し た 。 こ の た め 、 食 品 の
安 全 性 に 不 安 を 感 じ て い る 方 が 多 く お ら れ る と 思 い ま す が 、 こ の 不 安 を 払 拭 す る た め に は 、 危 険 な 食 品
が 流 通 し な い よ う に 厳 し く 監 視 す る こ と が 重 要 で す 。
兵 庫 県 で は 、 平 成 18 年 に「 食 の 安 全 安 心 と 食 育 に 関 す る 条 例 」を 施 行 し 、 食 の 安 全 ・ 安 心 の 確 保 に
力 を 注 い で い ま す 。 研 究 セ ン タ ー は 、 県 内 で 生 産 ま た は 流 通 し て い る 様 々 な 食 品 を 検 査 す る こ と に よ り 、
食 品 の 安 全 性 の 確 保 に 努 め て い ま す 。 本 リ ポ ー ト で は 、 そ の 取 り 組 み の 内 容 に つ い て ご 紹 介 し ま す 。
輸 入 食 品 の 検 査 の 強 化
日 本 で は 食 品 の 自 給 率 が 低 下 し 、 輸 入 食 品 が
多 量 に流 通 し てい ます 。現 在 、中 国 やアメリ カ など
の 多 く の 国 か ら 輸 入 し て い ま す が 、 残 留 農 薬 や 食
品 添 加物 の基 準 は各国 において、それぞれ異 なっ
て い ま す 。 ま た 、 食 品 に 対 す る 監 視 状 況 も 異 な る
た め 、 安 全 性 が 疑 問 視 さ れ る こ と も あ り ま す 。 こ れ
ら 輸 入 品 が 国 内 の 基 準 に適 合 し 、 安 全 で あ る こ と
を 確 認 す るた め 、 研 究 センタ ー で は輸 入 食 品 の 検
査 を強化 しています。
その一 例 として、農 産 物 の残 留 農 薬 検 査 につい
て示 します。右 図 は 2 0 0 7 年 度 と 2 0 0 8 年 度の検体
数 の 内 訳 で す 。 国 内 で 流 通 す る 野 菜 や 果 実 な ど
が 検 査 対 象 で あり 、 2008 年 度 は輸 入 品 の比 率 を
高 め、検 体 の半数 以上 を輸 入品 としました。
ま た 、 冷 凍 ギ ョ ー ザ の 農 薬 混 入 が 問 題 と な っ た
こ と か ら 、 20 0 8年 度 か ら ギ ョ ー ザ や 春 巻 き な ど の
加 工 食 品 に つ い て も 検 査 を 開 始 し ま し た 。 1 検 体
について 500 種程 度 の農薬 を測定 しており、ギョー
ザ事 件に混 入 していたメ タ ミ ド ホ ス も含 めています。
残 留 農 薬 試 験 の 検 体 の 内 訳 ( 年 間2 0 0検 体 ) [青 字 : 国 産 品、赤 字 : 輸 入 品]
柑橘類 15
柑橘類 15 冷凍野菜 20
野菜 16
野菜 12 果実 11 野菜 66
加工食品 60
種実類 1
種実類 1
その他の 果実 17
その他の 果実12
冷凍野菜 25 穀類 1
茶 1 種実類 2
種実類 1
果実 22 野菜 97
豆類 1 豆類 1
穀類 1 穀類 2
2007年度 2008年度
国産品
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兵庫県立健康環境科学研究センター
定 常 的 な食 品 検 査
流 通 す る 食 品 の 安 全 性 を 確 保 す る た め 、 食 品 に
は 様 々 な基 準 が設 け られて い ま す 。 研 究 セ ン ター で
は 、 毎 年 、 計 画 に 基 づ い て 各 食 品 が 基 準 に 適 合 す
る か ど う か を 検 査 し て い ま す 。 実 施 し て い る 検 査 は
先 に述 べ た農 作 物 の残 留 農 薬 検 査 を含 め1 3種 類
で あ り 、代 表 的 な も の を幾 つ か紹 介 し ま す 。
畜 水 産 食 品 の 残 留 医 薬 品
動 物 用 医 薬 品 は 、 病 気 の 予 防 や 治 療 の た め に
牛 、 豚 、 鶏 な ど の 家 畜 ・ 家 禽 や エ ビ 、 鰻 な ど の 魚 介
類 に 用 い ら れ ま す 。 た だ し 、 最 終 製 品 で あ る 食 肉 な
ど で の 残 留 濃 度 は 、 食 べ て も 人 の 健 康 に 影 響 し な
い 濃 度 以 下 で あ る こ と が 定 め ら れ て い ま す 。 研 究 セ
ン タ ー で は 、 合 成 抗 菌 剤 ( サ ル フ ァ 剤 な ど ) や 抗 生
物 質 (テ ト ラ サイ クリ ン な ど ) の 3 3 ~ 3 5 項 目 に つ い
て 、 牛 肉 、豚 肉 やエ ビ な ど を 検 査 し て い ます 。
輸 入 食 品 の 添 加 物
食 品 添 加 物 は 、 着 色 や 酸 化 防 止 な ど の 目 的 で
食 品 に添 加 さ れ て い ます 。 現 在 、 8 0 0 種 類 以 上 の も
の が あ り ま す が 、 そ れ ら の 使 用 基 準 は 国 に よ っ て
異 な っ て い ま す 。 こ の た め 、 輸 入 食 品 に つ い て は 日
本 の 基 準 に 適 合 し な い 恐 れ が あ り ま す 。 日 本 で 許
可 さ れ て い な い 食 品 添 加 物 が 使 わ れ て い た り 、 基
準 値 を 超 え て 使 用 し て い る ケ ー ス な ど で す 。 研 究 セ
ン タ ー で は 、 輸 入 品 の ビ ス ケ ッ ト 、 チ ョ コ レ ー ト や ジ ャ
ム な ど に つ い て 、 着 色 料 、 ソ ル ビ ン 酸 及 び サ イ ク ラ
ミ ン酸 な ど の 6項 目 を検 査 し て い ま す 。
豆 類 な ど の カ ビ 毒 素
カ ビ は 有 害 な 物 質 を 作 り 出 す こ と が あ り 、 カ ビ 毒
素 と 言 わ れ て い ま す 。 そ の 中 で 、 最 も危 険 な の は 豆
類 や 香 辛 料 な ど に 着 く カ ビ か ら 産 出 さ れ る ア フ ラ ト
キ シ ン で あ り 、 強 い 発 ガ ン 性 を 持 っ て い ま す 。 豆 類
な ど で の ア フ ラ ト キ シ ン の 汚 染 は 、 ア フ リ カ 、 イ ン ド 、
東 南 ア ジ ア な ど の 熱 帯 や 亜 熱 帯 で 多 発 し 、 日 本 で
は ほ と ん ど 認 め ら れ て い ませ ん 。 昨 年 、 ア フ ラ ト キ シ
ン が 含 ま れ る 輸 入 米 の 不 正 流 通 が 問 題 と な り ま し
た が 、 こ の 輸 入 先 も 東 南 ア ジ ア で し た 。 研 究 セ ン タ
ー で は 、 輸 入 品 の ピ ー ナ ッ ツ 、 ア ー モ ン ド や 唐 辛 子
な ど の豆 類 や香 辛 料 を検 査 し て い ま す 。
米 の カ ド ミ ウ ム
重 金 属 で あ る カ ド ミウ ム は、 イ タ イ イ タ イ 病 の原 因
物 質 と し て 知 ら れ て い ま す 。 米 は 土 壌 中 の カ ド ミ ウ
ム を 吸 収 し 、 土 壌 中 の 濃 度 が 高 い と き に は 、 米 で
の 濃 度 も 高 く な り ま す 。 日 本 人 の 場 合 、 食 物 か ら 摂
取 す る カ ド ミ ウ ム の 約 半 分 が 米 に 由 来 す る と 言 わ
れ て お り 、 農 作 物 と し て は 米 の み に カ ド ミ ウ ム の 基
準 が 設 け ら れ て い ま す 。 研 究 セ ン タ ー で は 、 毎 年 、
県 内 で生 産 し た新 米 を検 査 し て い ま す 。
遺 伝 子 組 換 え 食 品
輸 入 の 大 豆 や と う も ろ こ し は 、 遺 伝 子 組 換 え の も
の と 組 換 え で な い も の が あ り 、 徐 々 に 組 換 え の も の
の 割 合 が 大 き く な っ て き て い ま す 。 遺 伝 子 組 換 え の
歴 史 が ま だ 浅 い こ と か ら 、 組 換 え 農 作 物 の 安 全 性
が 不 安 視 さ れ る こ と も あ り ま す 。 こ の た め 、 消 費 者
へ の 情 報 提 供 と し て 、 大 豆 な ど の 農 作 物 や そ の 加
工 食 品 に 遺 伝 子 組 換 え の も の が 含 ま れ て い る か 否
か の 表 示 が 義 務 付 け ら れ て い ま す 。 研 究 セ ン タ ー
で は 、 表 示 が 正 し い か ど う か 輸 入 品 の 大 豆 や と う も
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健環研リポート 第17号
緊 急 の 検 査 へ の 対 応
昨 年 の 緊 急 検 査
研 究 セ ン タ ー は 、 健 康 被 害 に 係 わ る 事 件 が 発 生
し た 場 合 に は 、 原 因 物 質 の 特 定 や 含 ま れ て い る 量
の 測 定 な ど を 検 査 し て いま す 。 平 成 2 0 年は 、 1 月 の
輸 入 冷 凍 ギ ョ ー ザ の 農 薬 混 入 に 始 ま り 、 9 月 の 輸
入 汚 染 米 の 不 正 流 通 な ど 、 大 き な 事 件 が 多 発 し ま
し た 。
ギ ョ ー ザ の メ タ ミ ド ホ ス 混 入 、 及 び ペ ッ ト ボ ト ル 飲
料 の 除 草 剤 混 入 は 県 内 で も 事 件 が 発 生 し 、 マ ス コ
ミ な ど で 大 き く 取 り 上 げ ら れ ま し た 。 ま た 、 農 薬 ( メ タ
ミ ド ホ ス ) や カ ビ 毒 素 ( ア フ ラ ト キ シ ン ) で 汚 染 し た 輸
入 米 の 不 正 流 通 は 、 そ の 加 工 品 で あ る 焼 酎 や 和
菓 子 ま で も が 安 全 性 に 不 安 が 持 た れ 、 全 国 的 な 規
模 の 問 題 と な り ま し た 。
研 究 セ ン タ ー で は 、 こ れ ら 様 々 な 事 象 を 想 定 し た
体 制 を 整 え て お り 、 事 件 の 発 生 時 に は 迅 速 に 対 応
し て い ま す 。 下 表 は 平 成 20 年 に 実 施 し た 主 な 緊 急
検 査 の 事 例 です 。
研 究 セ ン タ ー の 対 応
研 究 セ ン タ ー で は 、 ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ ・ 質 量 分 析
計 や 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ・ 質 量 分 析 計 な ど の 高
性 能 の 分 析 機 器 を 保 有 し て お り 、 検 査 対 象 に 適 し
た 機 器 を 使 用 す る こ と に よ り 、 迅 速 な 検 査 を 実 施 し
て い ま す 。 下 表 に 示 し た 4 つ の 事 例 の場 合 も 、 1 ~ 3
日 間 で 検 査 を 行 い 、 県 民 の 皆 さ ん に 情 報 提 供 し ま
し た 。
今 後 の 取 り 組 み
研 究 セ ン タ ー で は 、 食 品 の 検 査 法 に 関 わ る 最 新
情 報 を 収 集 す る と と も に 、 保 有 す る 分 析 機 器 の 効
果 的 な 利 用 を 工 夫 す る こ と で 、 様 々 な 食 品 検 査 に
対 応 し て い ま す 。 今 後 も 、 定 常 及 び 緊 急 の 食 品 検
査 に お い て 迅 速 か つ 正 確 な 検 査 に 努 め 、 食 品 の 安
全 性 の 確 保 に貢 献 し て いき ま す 。
( 健 康 科 学 部 三 橋 隆 夫 、 秋 山 由 美 )
ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ ・ 質 量 分 析 計 ( 残 留 農 薬 の 分 析 な ど に 使 用 す る )
平 成 2 0年 に 実 施 し た 緊 急 の 検 査
事 例 検 体 名 数 検 査 項 目
冷 凍 ギ ョ ー ザ の 殺 虫 剤 混 入 に
伴 う 残 留 農 薬 検 査
冷 凍 ギ ョ ー ザ
そ の 他 冷 凍 加 工 食 品 3
4 メ タ ミ ド ホ ス 、 ジ ク ロ ル ボ ス な ど の 農 薬
ペ ッ ト ボ ト ル 飲 料 の 除 草 剤
混 入 に 伴 う 残 留 農 薬 検 査
コ ー ヒ ー 牛 乳
オ レ ン ジ ジ ュ ー ス
し ょ う ゆ
1 1 1
グ リ ホ サ ー ト な ど の 農 薬
は ち み つ の 産 地 偽 装 に 伴 う
残 留 抗 生 物 質 検 査
は ち み つ 8
ク ロ ラ ム フ ェ ニ コ ー ル 、 ス ト レ プ ト マ イ シ
ン 類 、 テ ト ラ サ イ ク リ ン 類 の 抗 生 物 質
焼 酎
和 菓 子
1 5
農 薬 : メ タ ミ ド ホ ス 、 ア セ タ ミ プ リ ド
カ ビ 毒 素 : ア フ ラ ト キ シ ン 汚 染 米 の 流 通 に 伴 う
残 留 農 薬 及 び カ ビ 毒 素 検 査
も ち 米
米 粉 等
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健環研リポート 第17号
再生紙使用
とぴっくす
平成 19 年 6 月、東京都内の温泉利用施設で大きな爆発事故が起こり、死者が出ました。この爆発の原因と
なった物質は、温泉水と一緒に噴出したメタン( C H
4
)で、空気中に 5%以上含まれると火気により爆発します。 この事故をきっかけに温泉の掘削や利用においてメタンの安全対策
の認識が高まり、平成 20 年 10 月に温 泉 法 が改正され、全ての温泉
に対してメタン濃度の測定が義務付けられました。
当研究センターでは、爆発事故直後からメタン分析を行い、温泉の
安 全 性 を確 認 しました。その結 果 、水 上 置 換 法 (写 真)による検 査 で
0 ~ 5 9 % 濃 度 のメタン(基 準 値 : 2 . 5 % )が検 出 されました。 また、温 泉 水 中 メタン濃 度 の分 布 と地 質 との関 係 を
見ますと、図のとおり、大阪層群、神戸
層群、和泉層群等に位置する温泉では
5 % 以 上の高いメタン濃度を示す温泉が
多く、安全対策を要することが明らかに
なりました。 県民の皆様が安心して温
泉を利用して頂けるように、今後も調査
研究に取り組みます。 (水質環境部 矢野美穂、川元達彦)
研究センター便り
~ 有機フッ素化合物汚染に対する取り組み
~
平成 19 年 5 月、フッ素加工用などとして幅広く使用されている有機フッ素化合物のペルフルオロオクタンスル
ホン酸(PFOS)やペルフルオロオクタン酸(PFOA)が、関西圏の水域等で濃度が高いことが新聞報道されました。
当研究センターにおいて、緊急に調査を行ったところ 、製造工場や使用工場か らの影響があると思われる流域
で濃 度が高くなる傾 向 が見 られました。
P F O SやP F O Aは 、 遠 く 離 れ た 北 極 圏 な ど か ら も 検 出
されて おり 、 地 球 規 模 の 汚 染 が懸 念 されて います が 、 その
挙 動 は 明 ら か に な っ て い ま せ ん 。 ま た 、 こ れ ら は 非 常 に 安
定 し た物 質 で 、 長 く 環 境 中 に留 まる 恐 れがある ため 、 国 際
的 に も 挙 動 解 明 が 急 が れ て お り 、 優 先 的 に 取 り 組 む べ き
物 質 と し て 取 り 上 げ ら れ て い ま す 。
当 研 究 センター では、 現 在 、国 立 環 境 研 究 所 をは じ めと
す る6つの研 究 機 関 と 共 同 し て 、環 境 中 での 汚 染 の把 握 、
発生源の解明および処理技術に関する調査を行っています。 (安全科学部 松村千里)
お 知 ら せ
兵 庫 県 立 健 康 環 境 科 学 研 究 セ ン タ ー 講 演 会 を 開 催 し ま す 。
日時:平成21年2月24日(火)13:00 ~ 場所:兵庫県民会館 9階けんみんホール 詳細は ホームページ URL: http://www.hyogo-iphes.jp/ で掲載しています。
編集・発行 兵庫県立健康環境科学研究センター 企画情報部
〒652 -00 32 神戸市兵庫区荒田町 2 丁目 1 番 29 号 Mail: [email protected]
温 泉 に お け る メ タ ン の 安 全 対 策
図 : メ タ ン 濃 度 分 布 と地 質 との 関 係 写 真 : メ タン の 捕 集 風 景